仏隆寺の千年桜と吉野山を訪ねて

仏隆寺千年桜　平成２０年４月２０日

	タクシーで仏隆寺に到着すると目の前には、 いきなり満開の千年桜を目にしました。 満開の千年桜は巨大な白鳥のようで 大地を力いっぱいけり、天空に向けて 飛び立つようでその美しさに酔いしれました。
この千年桜の仏隆寺は室生寺の四大門の一つで 南門になります。 室生寺まで４キロありまが、この４大門を東西南北 で囲んで室生寺の聖域を四方から守る役割を 担いました。 古の昔、まだ交通機関がなかった頃、 多くの女人達は女人高野室生寺の参詣にこの 仏隆に立ち寄ったに違いないと思います。 仏隆寺は、室生寺までの道標になり、千年桜の 美しさに酔いしれたことでしょうね〜
	ここからは、私の空想の歴史浪漫を述べます。 歴史的な根拠はありません。 遠くから室生寺の参詣に訪れる女人達は 交通機関のない時代で危険を伴う参詣 になったはずです。 中には病に倒れ亡くなった折は、 亡骸をこの仏隆寺の千年桜に埋めてほしい との依頼があったかも知れません。 私だったら、もし同じ境遇だとすると 私も亡くなった折はこの仏隆寺の千年桜 に埋めてほしいとねがいますね。 それほどこの千年桜は美しいのです。
千年の間、美しく保つ千年桜は、 亡くなった人々の亡骸の精霊を 吸い続けたのに違いありません。 そして、その精霊からきっとこの美しい 姿を保とうとしているのです。 道中で倒れた女人達は故郷へ帰りたい 一心だったに違いありません。 まるで生きている巨大な白鳥の様で、天空の空を 飛び立つようで、故郷へ帰りたい気持ちが 現れているように感じます。 千年桜は神が宿ると言います。 この千年桜はきっと多くの人々の幸せを 見守っているのではないでしょうか。
	２時間ほど千年桜を観ていると強い頭痛になり 気分が悪くなりました。言い伝えでは神の宿る 桜の精霊の仕業と聞きます。 そろそろここを退散する事にし、次の目標の 吉野山に行く事にします。 写真は仏隆寺から室生寺に向かう道です。

吉野山を訪ねて


吉野山にて　上千本から金峯山寺・蔵王堂を望む

	近鉄吉野駅に１１時ごろ到着、駅周辺は下千本 にあたり、この時期４月２０日は葉桜でした。 本来なら、吉野山ロープウエイに乗り金峯山寺 周辺の桜を楽しむんですが、もう遅いので 満開の奥千本までバスで一気に行く事にしました。 写真は奥千本入り口です
奥千本入り口を進むと金峯神社（写真右）に着きました。 桜と神社のコントラストはなんと美しいのか！ その美しさにうっとりしました。神社横の門は 義経隠れ塔の入り口ですです。行く事にしますね。
	皆さんもご承知の通り、義経は兄頼朝の 追手により命を狙われ、身ごもった静御前や 家臣弁慶ともども、この吉野山まで逃げていった 話はあまりにも有名ですね。静御前をこよなく愛した 義経との永遠の別れもこの吉野山です。この薄暗い 森の中の隠れ塔で義経はどんな思いだったのでしょう？ 写真は義経隠れ塔です。

隠れの塔の前は、うっそうとした森とは違って視界の広がる美しい光景でした。 義経とその家臣達は、きっとこの美しい景色も観る余裕もなかったに違いありません。 写真左側が大和高田市・香芝市・生駒山　葛城山・明日香村・榛原市になります。

	金峯神社を後にして、もっと奥の西行庵に行 く事にします。道標に従って進んで行くと、先日に 降った雨で道が濡なるんでいて最悪でした。 薄暗い森の中を進んでいくうちに、こんな 寂しい所に庵があるのか？驚きました。 西行は、京の皇居を守る武士で高貴な方でした。 世をはかなんで俗界をさけ、出家し月と花（桜）を こよなく愛する歌人になられました。 今で言う文武両道のお手本となるような素晴らしい お方だと思いますね。
西行庵まで後５００ｍです。山深い森は薄暗い 所です。この山道は大峰奥駆道といって吉野の 金峯山寺をスタートしゴールは熊野本宮となり 全長１７０Ｋｍです。この山道は「修験道」 の修行の道だそうです。気が遠くなるような長さ は、それ自体が道場であり霊場なのです。 大峰奥駆道は山上ヶ岳・大普賢岳・八経ヶ岳・ 釈迦ヶ岳など２０００近い山々がそびえています。 この大峰奥駆道の大変さはこれでよく理解 できると思います。道標に山上ヶ岳とありますが、 この道が大峰奥駆道である事が証明できたと思います。
	大峰奥駆道を進んでいくうちに、西行庵の 道標を発見しました。西行庵の石柱の道標と 私が手を差し伸べているのは松尾芭蕉の句碑 なのです。なぜこんな所に芭蕉の句碑があるのか？ 疑問を持ちましたが、現在は西行没後８００年ですが 芭蕉の頃は、西行没後５００年ぐらいの時代でした。 芭蕉もまた西行を慕い、吉野に二度訪れていました。 芭蕉は、西行の生き方に共鳴したに違いありません。 松尾芭蕉のきっと師匠が西行だったことでしょうね。 そして、西行が桜を愛したのと同様に芭蕉も桜が好き だったに違いません。道標では、西行庵まで２００ｍと書い てあります。道標に従って少し薄暗い森の中に入って 行く事にしますね！
西行の石柱の道標に従って薄暗い森から急に 視界が広がりました。満開の桜の美しさにうっとり！ 山桜は、葉とともに満開を迎えるのですが、 葉っぱの色と、薄いピンク色の花びらとのコントラスト の美しさに吉野山の特徴が表れているようです。
	この辺りが、吉野山奥千本みたいですね。 ４月２０日（日曜）ですが、ここ奥千本では 満開を迎えているようです。下千本辺りの 近鉄吉野駅から、中千本・上千本 と続き、一番奥深いところがこの奥千本に なります。だから、吉野山の桜見は 下千本から始まりゴールの奥千本までの桜観は ４月１日頃から開花する下千本から今日の 奥千本の桜まで長期に花見が出来ました。 そして、吉野山を詠った西行の歌に、 有名な歌で「願はくは花の下にて春しなむ そのきさらぎの望月のころ」と詠っています。 この句は西行の辞世の句だと言われています。
奥千本の道標の近くに西行の庵を 見つけました。吉野の一番奥ですね。 ここで沢山の句を作り３年間過ごされました。 写真は西行庵と西行の像です。
	西行庵から少し歩くと苔清水があります。西行は 「とくとくと落つる岩間の苔清水 汲みほすまでもなき住まひかな」 と詠んでいます。芭蕉も同じように 「露とくとく心みに浮世すすがばや」と詠んでいます 冷たく清らかな山水である。 かたわらに西行を慕った芭蕉の句碑がたっている。
西行庵を後にして、苔清水に行きました。次は下山する 事になります。下山する道中の景色が、人生で 最も美しい景色を拝見するとはこの時点では 想像することも出来ませんでした。 ともかく、金峯寺に戻り奥千本入り口を目指す事に します。
	狭い山道を進んでいくうちに、広い山道に と出会しました。大きな看板に目が入り、この 広い道が大峯奥駆け道である事がこの看板から わかりましたもう一度大峯奥駆道について述べます。 吉野山金峯山寺から熊野本宮 を結ぶ１７０Ｋｍの[修験道」の修行の道だそうです。 ただ単に行き来する為の道ではなく、 自然そのもの（山川草木）を神仏に見たて 修行する修験者にとって、大峯奥駆道自体が 道場であり、霊場なのです。 また、この「大峯奥駆道」は世界遺産に 登録されています。
この、大峯奥駆道は多くの山伏達が 何ヶ月もかけて修行するのです。看板には まず、２０００ｍ近い山上ヶ岳の案内が書かれていました。 この大峯奥駆道はそれ自身が霊場なので 植林・伐採も許されない自然に近い状態で保たれています。 女人禁制で、修行の厳しさを感じ取る事も出来ました。 さっき述べた、義経の静御前との決別も女人禁制 の霊場に入った事も影響があるみたいです。 そして、この大峯奥駆道の広大さに感激し 世界に例を見ない、自然を神と見立てる山岳宗教を 少し理解できるようになりました。 ちなみに、この大峯奥駆道は登山靴では通おる事が 出来ないのです。山伏はわらじかな？

金峯神社まで戻り、そこから奥千本入り口に着きました。奥千本入り口にはバスが蔵王道まで ピストン運行している事を知り、乗車券を購入して蔵王道からロープウエイで下り吉野駅までいいき、 帰る計画をしていましたが、乗車券売り場の人が是非徒歩で下山して景色を楽しんでください とアドバイスをいただきました。これが今回の旅で人生最も感激した景色を観る事が出来ました。 金峯神社から徒歩で下山途中に、高城山展望台の道標があったので、少し勾配のきつい道でしたが 行ってみることにしました。義経隠れ塔からみた方向と同じになりますね。 ４月２０日と言えども、この辺りは上千本辺りなので今が一番見ごろみたいですね。 本当に素晴らしい景色に感激しました！以下皆様は景色を楽しんでください。

	高城山展望台を後にして、目指すは蔵王堂 です。道標の隣に茶屋がありましたので、 まだ昼食をとっていなかったので遅い 「昼ごはん」にしたいと思います。
茶屋に入り、しいたけご飯を注文しました。 質素な食事でしたが、素晴らしい景色の元で の食事は最高のご馳走でした。桜吹雪が舞う中で の食事は風流で経験する事もあまりないのでは？ 桜吹雪の花びらがテーブルの上に写っているのが わかりませんか？風流ですねぇ〜
	茶屋での食事を終え、茶屋横の広場に 多くのカメラマンが群がって撮影していたので 気になり、近寄ってみると素晴らしい景色を 目にする事が出来ました。この光景は人生で最も 感激した風景です。 写真は、上千本から蔵王堂に向けて撮った写真で 本当に感激しました。 西行や松尾芭蕉がこよなく愛した吉野山の桜の 美しさを身をもって体験できたかな？ 蔵王堂は中千本あたりになりますが、４月の初め 頃ではもっと素晴らしい景色になるのでは ないでしょうか？
昼食も終わり、美しい景色を後にして 道標に従って蔵王堂に向かいます。 途中、上千本の看板を発見。この辺りの上から が上千本となりますね！
	蔵王堂に近づくにつれ、桜が葉桜に変わる様子が ひしひしと感じました。もうこの辺り中千本はほとんど 葉桜ですね。吉野山はもともと、山岳宗教 「修験道」の修験者達が神木としている 山桜を植樹し、大きくなった山桜の実を 小鳥達が吉野山のあちこちに種を運び、 山桜が増えたそうです。 写真は金峯山寺蔵王堂の正面玄関です。
写真は金峯山寺の蔵王堂です。 木造建築では、東大寺に次ぐ大きな建物 になるそうです。 世界で第二番目の木造建築ですかね〜 ともかく大きな建物です。
	写真は金峯山寺の二王門です。 この度はこの二王門で旅の終わりを 告げます。 これから、お土産屋が多い参詣道を通り ロープウエイに乗り近鉄吉野駅まで行き 帰路に着くのです。 ※お土産は吉野葛・柿の葉すしがありますね。 　それと、このお土産屋が並ぶ参詣道も 　大峯奥駆道になります。
金峯山寺からロウプウエイに乗り、そこから 近鉄吉野駅行きました。これからこの駅から 電車に乗り帰ることにします。